発行日 : 2011年09月07日
2011年台風12号は9月3日から4日にかけて、高知県から鳥取県へと縦断した。台風は大型で勢力が強く、かつ移動速度が約10km程度と遅かったため、 関東地方から中国・四国地方にかけての広範囲で、200mm以上の大雨となった。最も総降水量が多くなった紀伊半島南部では、1000mmを超える大雨となり、河川の氾濫や大規模な土砂崩れ、土石流が発生した。全国で計100名を超える死者・行方不明者が出た。

風12号は8月25日にマリアナ諸島近海で発生。台風は海面水温が28度~29度と高い海域をゆっくりとした速度で北寄りに進み、30日には強い勢力に発達した。30日になると日本の東海上に中心を持つ優勢な高気圧に北上を抑えられたため、進路を西寄りに変えた。その後、あまり勢力を落とすことなく、高気圧の縁をまわるように進み、9月3日10時前に高知県東部に上陸した。台風を加速させる偏西風が台風から遠く、朝鮮半島北部付近に位置していたため、台風は非常にゆっくりとした速度で四国地方から中国地方を縦断し、4日3時には中心が日本海に達した。その後、台風は日本海を北東に進んで、5日15時に温帯低気圧に変わった。
表は、9月3日10時の上陸前後の台風の移動のデータである。台風は上陸前の3日7時頃から時速10kmという自転車より遅い速度で北上していた。この遅さが降水量の多い要因となった。
表:上陸前後の台風の移動速度と方向
| 観測日時 | 移動速[km/h] | 移動方向 |
|---|---|---|
| 2011/9/2 22:00 | 20 | 北北西 |
| 2011/9/3 1:00 | 15 | 北北西 |
| 2011/9/3 4:00 | 15 | 北北西 |
| 2011/9/3 7:00 | 10 | 北 |
| 2011/9/3 10:00 | 9 | 北 |
| 2011/9/3 13:00 | 9 | 北 |
| 2011/9/3 16:00 | 15 | 北 |
| 2011/9/3 19:00 | 9 | 北 |
上陸直前の台風の遅い複雑な動きは、ソラテナ(※)の気圧データでも見られた。図のように3日5時頃には室戸岬で気圧が上昇し、高知市付近で気圧が下降していることから、この時点では室戸岬を離れ、高知市へ接近しつつあることがわかる。2時間後の7時には、高知市で気圧がやや上昇し、室戸岬付近ほぼ横ばいからやや下がっていて、進路が東へ少し寄ったことを示している。

色はソラテナの気圧データから解析される、前1時間気圧変化量(hPa)。赤い星は台風の中心位置を示し、矢印は中心付近の気圧変化量から推測される移動の方向を表す。
*ソラテナとは、ウェザーニューズとKDDI株式会社が共同で全国約3,000カ所に設置している気象観測装置である。

大型で動きの遅い台風であったため、8月31日頃から通過後の9月5日にかけての約6日間、関東から四国にかけての広範囲で強い雨が降った。紀伊半島南部では総雨量が1000mmを超え、奈良県のアメダス上北山では8月31日から9月5日の6日間で1800mm近くに達する記録的な豪雨となった。右図は8月31日〜9月5日の総降水量(アメダス)。白色は1000mm以上。
台風が本州付近へ接近する前、中心付近では直径約200kmの発達した雲がない領域があり、ドーナツ型の雲分布であった。このため、中心付近よりも約100km以上離れた地域でより強い風雨となる傾向であった。
![]() |
![]() |
大雨による被害は、北海道、関東、東海、近畿、中国、四国地方と広範囲に及んだ。人的被害は死者48名、行方不明者56名、家屋の全壊が86棟、半壊が19棟、床上浸水が2,126棟、床下浸水が12,343棟(※死者行方不明者の数字は9/6現在、他の数字は9/5日現在)となった。
1:和歌山県
那智川では9月4日未明に一気に濁流が押し寄せた。中流域の井関集落では、水に加えて川砂が大量に押し寄せて1階部分を埋めた。砂が一緒に流れ込んだことで家屋の倒壊が多く、集落はほぼ全壊状態となった。また、那智川下流域では、濁流と木材が大量に流れ込んだことで橋や鉄橋が崩落した。
![]() |
![]() |
![]() |
| 写真1:井関集落 | 写真2:口色川集落 | 写真3:流されたJR紀勢本線の鉄橋 |
2:岡山県
床下浸水8,028件と家屋の被害が多く発生した。写真4は、旧旭町の至る所で土砂崩れが起きて、道路が寸断された様子。写真5のように、用水路から水があふれ、倉敷市内の道路が冠水した。倉敷市では232mmの雨が降った。
![]() |
![]() |
| 写真4 リポーター名:がっちゃんさん (岡山県久米郡) |
写真5 リポーター名:みちしおさん (岡山県倉敷市) |
3:兵庫県
写真6は、加古川市のコンビニエンスストアへの浸水被害。加古川市付近では総降水量が300mmを超え、1時間に最大79mmの激しい雨が降った。写真7は、六甲アイランドで発生した高潮による冠水の被害。
![]() |
![]() |
| 写真6 リポーター名:3児のママさん (兵庫県加古川市) |
写真7 リポーター名:みちしおさん (兵庫県神戸市) |
2011年9月3日から5日にかけて、台風12号が四国から中国地方を縦断し、関東から中国、四国地方にかけての広範囲で大雨をもたらした。特に紀伊半島南部では1000mmを超える記録的豪雨となり、河川の氾濫や土砂崩れ、土石流が発生し、多数の犠牲者を出した。このような甚大な被害となった要因としては、台風が大型で勢力が強く、且つ、ゆっくりとした速度で日本に接近したため、強い雨が8月31日から9月5日の6日間にわたって続いたことが考えられる。台風接近時には、ソラテナの気圧データでも台風の細かな移動を捉えられる可能性があり、今後も解析を進めていく。また、雲の形がドーナツ型の台風は、世界の研究者の中で“Annular Typhoon(Hurricane)”など (Annular=輪状)とも呼ばれ、近年新たな研究対象となっている。 中心付近では発達した雲が少なく、風も弱まることがあるが、 周りには非常に活発な雨雲が形成される。今回の様に雨がまとまり大きな 災害に繋がるケースもあり、今後の同様な事例おいて参考にすべき事例である。
※このWx Filesの記載は速報値であり、二次災害あるいは今後同様の災害を少しでも減らすことを目的としています。